院長あいさつ
認知症専門病院として
前院長、村田憲治先生の異動に伴い、令和5年4月より福井県立すこやかシルバー病院・病院長になりました升谷泰裕と申します。医師となり11年目となります。これまでは福井大学医学部附属病院精神科、福井県立病院こころの医療センターと主に急性期の精神疾患の診療を行ってきました。院長就任にあたり、一言ご挨拶させていただきますとともに、当院の紹介をさせていただきます。
現在日本における65歳以上の認知症の人の数は約600万人超と推計され、2025年には約700万人(高齢者の約5人に1人)が認知症になると予測されています。高齢社会の日本では認知症に向けた取組が今後ますます重要になっていかざるを得ない状況です。
認知症における認知面の治療については、現在よく使われている抗認知症薬においても、また最近話題となっている新薬においても「症状の悪化を抑制する効果」とされています。そのため、「物忘れがあってもまだ大丈夫だろう」と過信することなく、予防や早期診断、早期からの治療が重要と考えます。
当院では症状経過などの問診はもちろんとして、心理士による詳細な心理検査や、脳血流や神経伝達物質の脳内での変化を画像として捉える核医学検査を用いることにより、より詳細に認知症の早期診断を行うことができます。また当院は医療保険によるデイケアを行っており、複数の看護師や作業療法士による認知リハビリを行うことが出来ます。心配なところがあれば受診の相談や、かかりつけの先生からご紹介していただければと思います。
また進行した認知症では易怒性や徘徊、被害妄想などの認知症周辺症状(BPSD)が出現し、家庭内での介護者の心身の負担が増加します。施設においても介護スタッフの不足・特にコロナ禍においてさらに負担が増えたことにより、対応が困難となる例もあります。まずは外来診療での症状改善を目指しますが、当院では入院加療についても臨機応変に対応しています。特に近年は入院日数の短縮と在宅復帰率の増加を実現できており、薬剤治療のみならず、病棟スタッフの専門知識に基づく看護・介護や、精神科ソーシャルワーカーによる地域介護資源との連携によるところが大きいです。
最近は認知症における倫理が課題となっています。特に延命治療などについては家族や医師と早期から相談出来たり、認知症が進行しても自分の意思を主張できるよう工夫が必要です。そしてその上で、必要な身体治療は行われる権利があります。各総合病院とも連携し地域で認知症診療を行い、その中で当院が皆様の支えになりなりますよう、さらなる努力を行っていきたいと思います。
- 福井県立すこやかシルバー病院
- 院長 升谷 泰裕